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Author:谷中徳兵衛
最近になってなぜか落語を熱心に聞くようになりました。講談、浪曲の世界も勉強中です。長くご無沙汰していた歌舞伎や文楽にも再び通っています。
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05月16日(水)

5月文楽公演@国立小劇場(2012年5月12日)

健康のために自転車を買ったので、自宅から三宅坂の国立劇場までサイクリング。ゆっくり走ったのに、それでも一時間弱で到着。自転車なら、街は急に身近に感じるのが楽しいけれど、国立の手前にある九段の坂はちょっときつかったです。

◇八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)
加藤清正を主人公にした、スプクタクル史劇といった味わいの作品。文化四年に中村魚眼、佐川藤太という二人の合作により初演。幕府をはばかって、清正は加藤正清と申し訳程度に名前が帰られており、徳川家康は北条時政と言うことになっていますが、豊臣家滅亡をはかる徳川家康と幼君の豊臣秀頼を守ろうとする加藤清正の物語であることは一目瞭然。
いつもこの時代の歴史ものの芝居を観て感じることですが、家康を徹底的に悪役に描いたこんな作品の上演が許されたのが不思議です。幕府の度量が広かったのか、あるいは取り締まりが間抜けだったのか。戦前の治安維持法時代の軍国主義政権とは大違いです。

正清は時政に毒を盛られ、ともに毒酒を飲んだ時政の重臣、森三左衛門はたちまち絶命するのに、正清は悠々との国元に熊本に船で引き揚げます。
この陰謀の陰で、正清の子息の主計之助(かずえのすけ)と三左衛門の娘の雛絹との色模様も並行して進行。雛絹の積極的な告白にたじたじの主計之助。文楽や歌舞伎のお姫様は愛一筋に突き進むタイプが多いのが好きです。雛絹との濡れ場を見つかって不義者として成敗されるところを、時政のとりなしで二人は公認の許嫁に。<毒酒の段>

三左衛門が死んだからには正清も無事のはずがないと、時政の命を受けて家臣が次々と正清の様子を確かめに、正清が嫁となる雛絹を連れて国に戻る船まで確かめにきますが、正清は悠然として平気な姿を見せます。実は信じられないような胆力で、毒が回るのを抑えていたのだということのようです。時政から贈られたつづらから刺客の忍者が飛び出すなど、観客を喜ばす仕掛けもたっぷり。<浪花入江の段>

本国へ戻った正清は物忌みと称して百日の引き籠りで、だれにも会いません。星の異変から正清の身に大事が起こったと悟った大内義弘(島津義弘)や船頭の灘右衛門、実は児嶋元兵衛(後藤又兵衛)が見舞いに訪れます。父の様子を確かめるべく、主計之助も早駕籠で国元へ。<主計之助早討ちの段>

毒のまわりを薬草の根を食べてしのいでいる正清が、妖術で鼠に化けて正清の命を狙う刺客たちを懲らしめます。時政の情けを受けて雛絹と夫婦になれば、時政とは戦えないからと主計之助から離縁状を渡されたのを悲観して、雛絹は自害をはかります。
都に戻る途中、敵に襲われた主計之助を助けた灘右衛門は、実は児嶋元兵衛(後藤又兵衛)であることが明らかに。主計之助は結局、佐々木高綱なる者に助けられ、無事であることもわかります。佐々木高綱と言えば、実は真田幸村のことという芝居でのお約束を、当時の観客はよく知っていたのでしょう。高綱と又兵衛という最強の軍師を豊臣方が得たことに安心して、正清もまた、粛々と死の時を迎えます。<正清本城の段>
以上がストーリーの大略の紹介ですが、実に盛り沢山なエンタテインメント活劇であることはお分かりいただけたのではないでしょうか。

◇契情倭荘子(けいせいやまとぞうし)
大名の北畠家の若君とその許嫁の姫君のために身代わりとなって死んだ相思相愛の二人が、死後に蝶となって道行をする、景事、つまり舞踊です。中国の思想家、荘子が蝶になって飛び回る夢を見て、人間が蝶の夢を見ているのか、蝶が人間の夢を見ているのか、真実は誰にもわからないと説いた話しに由る外題だそうです。それにしても人形を激しく、長時間踊らせるというのは、人間による舞踊よりもずっと重労働のはずです。
 
05月10日(木)

5月花形歌舞伎・夜の部@新橋演舞場(2012年5月3日)

5月の新橋演舞場夜の部は三島由紀夫作の「椿説弓張月」(ちんせつゆみはりづき)の通し上演。もともとは江戸後期、曲亭馬琴の同名の長編小説が原作。
保元の乱で平清盛らに敗れ、伊豆大島に流された源為朝が大島を脱出して琉球国に至るまでの冒険譚。為朝役は初演の八世松本幸四郎、再演の当代幸四郎にあやかってか、4回目の公演となる今回は市川染五郎。祖父、父、子と三代続いての配役。
芝居は上・中・下の三巻構成となっており、上の巻は為朝が流されていた伊豆大島が舞台で、都からの討伐軍と戦って、大島を脱出するまで。中の巻は、保元の乱で敗れた崇徳上皇の墓所がある讃岐の国の白峰から。院の墓前で為朝が切腹しようとしたとき、現れた院の霊に諭されて肥後の国に向かい、そこで死んだと思っていた妻の白縫姫と再会、平家討伐の挙兵をするも、暴風雨にあって難破するまで。下の巻は琉球国に流れ着いた為朝が琉球王朝の乗っ取りをたくらむ逆臣らを滅ぼすお話しが軸。
ストーリーはかなり複雑で、ここで簡単に紹介することはできませんが、三島由紀夫が歌舞伎の定法にのっとりながらも、これぞ歌舞伎という、ドラマ作りを意識してつくったことは一目瞭然。歌舞伎の名場面のもじりが次々と登場します。たとえば伊豆大島でまだ幼い為朝の子の為頼が切腹するところは盛綱陣屋の小四郎切腹の場のパロディ。
「金閣寺」の雪姫など、美しい女性が折檻される場面を連想させながらも、男女を入れ替え、裸姿の美しい元の家臣の裏切者、武藤太を白縫姫と女官たちが嬲り殺すシーンなどはいかにも三島好みと思われる場面です。
いくつかあるこうしたもじりの場面で、もっとも成功しているのはラストに近い「北谷夫婦宿の場」。王朝乗っ取りに加担していたと思われていた王室の乳母の阿公(くまぎみ)が為朝家臣に斬られて刀を体に刺されたまま、実は善人とわかる告白シーンは、合邦辻の玉手、などの歌舞伎でおなじみの「モドリ」の演出。
染五郎以外の主な出演は、大島での為朝の地元妻の簓江(ささらえ)に芝雀。白縫姫に七之助。阿公に翫雀。出演者の中でうまさに驚かされたのは、阿公に母を殺された鶴と亀の兄弟のうち、弟の亀に扮した尾上松也。母の仇を打とうと阿公の経営する夫婦宿に入り込むため、兄の鶴と夫婦を装うため女房に扮した姿の美しさは特筆もの。女房らしいしぐさと声で話すところと本来の男に立ち返って話すところの瞬時の切り替えでも観客を十分に楽しませてくれました。松也は当月演舞場の昼の部では「西郷と豚姫」での芸者役でもみごとな演技で、今月の演舞場では文句なしの特別賞。

 
05月05日(土)

5月花形歌舞伎・昼の部@新橋演舞場(2012年5月3日)

◇西郷と豚姫
池田大伍という劇作家が無名会という新劇の劇団のために、大正期に書き下ろした作品だそうです。新劇のための戯曲が歌舞伎に取り入れられるのは、大変珍しいのではないでしょうか。
名君と評価の高かった島津斉彬の没後、薩摩藩の実権を握った島津久光から疎まれ、不遇をかこっていた西郷吉之助と、京都で当時賑わったらしい三本木という花街にある揚屋で、豚姫とあだ名される仲居、お玉との恋の物語。西郷が自分同様に太っている仲居を愛したという、勝海舟の「氷川清話」ほかに書かれている逸話から想を得て書かれた作品だそうです。
三本木は薩摩や長州の藩邸に高かったため、勤皇の志士の出入りが多かった花街なんだそうです。現在の京都ではその跡を偲ぶよすがもありませんが、同社社大学の近辺にあったようです。
正直なところ、恋物語としても歴史劇としても中途半端きわまる作品で、あえて言えば西郷とお玉と言う、体格にふさわしいおおらかな性格から誰からも慕われている二人を、役者がどう演じてみせるかが唯一の見どころになるようなお芝居。お玉に中村翫雀、西郷に中村獅童。
翫雀は祖父の二世中村雁治郎がこの役を得意にしていたところから、いつかは自分の当たり役としたい思いからの挑戦のようですが、お玉と言うキャラクターをどう造形したいのか、役作りの工夫のあとがうかがえず、セリフをこなすのが精いっぱいと言う印象。観劇したのがまだ初日から三日目ということもあったでしょうが、獅童はこの役をこなすのはこの先、十年以上の歳月が必要なのでは感じさせました。
特筆すべきは、岸野という芸妓役の尾上松也。恋しい男との思いがかなわぬことから毎夜、酒におぼれる芸者の酔っ払いぶりを好演。客席からも思わず拍手が沸き起こっていました。

◇紅葉狩
更科姫実は戸隠山の鬼女に中村福助、余吾将軍の平維茂に中村獅童。
納得のいかない西郷の演技の直後だけに、獅童の維茂には見る方もなかなか感情移入できません。

◇女殺油地獄
放蕩を尽くした末についに殺人まで犯してしまうことになる河内屋の与兵衛に片岡愛之助、与兵衛に惨殺されることになる豊嶋屋女房のお吉に中村福助。
愛之助は目標にしている叔父の仁左衛門の得意にしてきたこの役をなんとか自分のものにしたいと奮闘中の作品。福助のお吉は初役。福助は最近、大役への意欲的なチャレンジがめだちます。この芝居の最大の見どころは、二人が油まみれになっての殺しの場面ですが、ここでの福助の熱演が光り、愛之助とは貫録の違いを見せつけた感じでした。
 
05月04日(金)

桂文珍大東京独演会@国立劇場小劇場(2012年4月28日)

国立劇場でこの何年か、毎年開いている文珍独演会。今年はゴールデンウィーク序盤のおこなわれた二日目。今回は主催者の読売新聞からの先行販売の案内で申し込んだせいか、2列目のほぼ正面といういい席でした。
お客のリクエストでその日の演目を決める、文珍独演会ではもうおなじみのやりかた。そう言えば、昔、藤山寛美が松竹新劇で、同様のやり方でその日の演目を決めていました。
◇月亭八天「とりとり」
「鷺とり」の前半でしょうか、雀の群れを酔っ払わせて一斉に捕獲しようとするお話し。文珍師匠のお気に入りなのか、文珍独演会ではよく聞く人。いかにも上方落語らしい香りの色濃い人です。

◇桂文珍「マニュアル時代」
まずは数十の演目をならべた大きな幕がステージ正面に降りて来て、そのほかにも10個ばかり¥今日のお勧め」を書いた小さい垂れ幕を弟子の楽珍が持って登場。
客席から、小学生くらいの女の子の声で「マニュアル時代はダメですか?」のかわいいリクエスト。これは採用しないわけにはいきません。

◇内海英華・女道楽
東京の寄席で言えば俗曲。文珍師匠のツアーには最近決まって同行しているようで、英華さんによれば今日の文珍師匠はこれまでになくテンションが上がっているそうです。
一昨年の10日間連続文珍独演会で初めて高座で芸を見て、それ以来、私も応援している人。東京での独演会にも駆けつけ、本も買ったほどの贔屓です。上方のお座敷芸にしっとりと触れているような雰囲気。もっとも「女道楽」を名乗っているのは、現在では英華さんだけらしいです。

◇桂文珍「らくだ」
昨日もリクエストで演じて「くたくたになった」そうですが、再び採用。昨日に続いてきている人もいるはずですが、構わないんでしょうか。
文珍の「らくだ」は上方の型なのか、くず屋が酔っ払って人が変わっていく様子を時間をかけてたっぷりとやり、説得力十分。

<仲入り>

◇桂文珍「るるるとららら」+「老婆の休日」
客席からの「るるるとくらら」とのリクエストに客席も大爆笑。「るるるとららら」は由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」をパロったネタ。そう言えば、アメリカで最近大ブレイクしたという由紀さおり。私も若いときからのファンです。歌謡曲では、おそらく私の人生でただ一度だけ行ったことのある歌手がこの人。
「老婆の休日」は文珍の新作落語ではもはやテッパンネタともいえる噺。
 
04月28日(土)

柳家さん喬の前座噺と蔵出しの会@深川江戸資料館(2012年4月27日)

さん喬に前座噺を演じてもらおうというかなり玄人好みの企画。何をもって前座噺と言うのか、明確な定義はないんだそうで、各派各一門が前座に演らせる噺、前座が高座にかける機会の多い噺ということになるようです。さん喬は、前座は毎日のようにこういう噺をやっているわけだから、前座の方が自分よりうまいはずと謙遜していましたが、師匠連は日ごろから前座にこういう噺の稽古をつけて指導しているわけですから、高座で演じる機会は少なくてもうまくやれるのは当然かも。

◇小町〜牛ほめ〜高砂や〜魂の入れ替え
前座噺と言うことで、開口一番はなし、いきなりさん喬が高座へ。「落語の方に出てくる人物はと言うとたいてい〜」といつものさん喬とは違う口調で切り出すだけで会場は爆笑。
「道灌」はおそらくもっとも高座にかけられることの多い噺でしょうが、隠居さんの家の貼り混ぜの小屏風の絵を順に隠居が解説していくのが本来の「道灌」なんだそうで、全部やると一時間からかかる長尺の噺だそうです。冒頭の「小町」が終わったところで、そんな解説。
高座からそのまま下りることなく、「牛ほめ」「高砂や」と連続で。さん喬の謡曲がうまいのにびっくり。前座さんたちにはこういうところまで見習って、謡の素養も多少は身につけて聞き苦しくないようにしてほしいと思います。
前座噺なのかどうか、最後は「魂の入れ替え」とかいう珍しい噺で、私は初めて。体の見る夢と魂のみる夢があり、魂の見る夢は記憶に残らないそうです。
鳶の頭が「先生」と呼ばれる人物の家で酒を飲んで酔っ払ってそのまま泊まることになり、寝てる間に二人の魂が抜けだし、体に戻る際に魂が入れ替わってしまうというような噺でした。結局、二人の魂がもとに戻らないまま終わってしまうので、ちょっと尻切れトンボになってしまい、これでは高座にはかけにくいでしょう。

<仲入り>

◇蝦蟇の油
黒の紋付羽織袴に着替えて「蝦蟇の油」。油売りの口上がみごと。さん喬さんは酒は嗜まないと聞いたように思いますが、酔っ払いの演技もさすがです。

◇丸山おさむ・物まね
初めて聞いた人で、落語協会所属の人らしいですが寄席ではお目にかかったことはありません。60〜70年代あたりの歌謡曲やフォークが得意のレパートリーのよう。最後の奥さんと出会ったころを思い出してと言う、一人二役のダンスでのちょっときわどい手の動きがみもの。

◇鴻池の犬
むろん上方落語の「鴻池の犬」を東京に移入したもの。通常、上方の噺を東京に持ってくる場合は舞台も全面的に関東に移すわけですが、「鴻池」という名前を残したい場合はそういう訳にもいかず、話しの筋を工夫する必要があります。
ここでは江戸両国の犬が鴻池の江戸の出店の責任者に見つけられて、大阪の鴻池のご本家に送られるという設定に。この設定のおかげで、鴻池にもらわれたクロの弟のシロが、東海道を苦労しながら旅をするというロードストーリーが加わりました。シロが大阪に着いてからは江戸弁と大阪弁を使い分けるところが難しいわけですが、さん喬は「えろうすんまへん」という大坂弁のギャグをリピートさせることでうまく乗り切っていました。

 
04月24日(火)

Woman's落語会by白鳥@日本橋社会教育会館ホール(2012年4月23日)

落語会や歌舞伎の観劇がこの日でついに4日連続となり、さすがにちょっとバテ気味の体に鞭打って雨の中、人形町へ。
白鳥が若い女性落語家陣に自作の新作や改作を提供する企画の4回目。客の入りもあまりよくないのに、この会がなぜそんなに続いているのか、そもそもどうして白鳥師匠がそんなに若手女性噺家の指導に熱心なのか、よく考えてみればちょっと不思議ですが、講談や浪曲に比べ女性演者のレベル率直に言って見劣りしている現状を考えれば、女性落語家の新しい世界を切り開こうというこの会は、お世辞抜きですばらしい企画だと思います。

◇トーク
前回は川柳つくしと林家ぼたんに白鳥がインタビューするホントの「トーク」だったと思いますが、今回は時間がないのか、白鳥が出演者全員のネタを紹介しただけ。

◇三遊亭粋歌「バリバリ女子大生」
歌る多の弟子の二つ目。モテない女子大生二人のバリ島への卒業旅行のドタバタ。

◇古今亭ちよりん「長屋の花見」
こちらは菊千代の弟子の二つ目。旦那たちが花見に出かけた後、おかみさんたちが日ごろの生活の知恵で集めた豪華な本物の酒肴で、旦那たちの花見よりはるかに本格的なお花見。

◇三遊亭白鳥「豊志賀ちゃん」
もちろん「豊志賀の死」の改作ですが、中身はまったくの白鳥ワールド。豊志賀師匠が若い噺家に三味線を教えるうちに深い仲となり、弟子の若い娘への嫉妬からのストレスによるヤケ食いから怪物のようにブクブクに太っていって・・・と言うようなお話し。オリジナルの「豊志賀の死」を知らないと、ちょっとパロディとしての面白味はわかりにくいかもしれません。
ちなみに寄席で粋曲、俗曲を高座で演じる小菊や小円歌と言ったお師匠さんたちは協会には属していても真打には絶対になれないんだそうで、したがって寄席でトリを取ることは一生なく、いわゆるトリの前のヒザしかできない、というのがこの日のマクラ。白鳥は小菊姐さんから「あんたのヒザだけは絶対にやってやんない」と宣言されているそうです。

<仲入り>

◇柳亭こみち「鉄砲のお熊」
他の女性出演者には失礼ながら、実力の差は歴然でダントツにうまい。風邪をこじらせたとかで、木の味がするという「五代目小せん」と書かれた茶碗でお茶を飲みながらの高座。声がかすれているようにも聞こえなかったので、ちょっと意地の悪い見方をすれば、小三治師匠よろしく、高座でお茶を飲んで話に間を入れるというやりかたをまねて気取ってみたかっただけかも。
噺の方は白鳥作にしては意外とオーソドックスな作品でストーリーもわかりやすい。江戸時代の女相撲(が本当にあったのかどうかはわかりませんが)の力士のお熊の話。女相撲の「みんなでシコ」から転じて「ナデシコ」が女性スポーツの代名詞になったという落ち。

◇林家ぼたん「地下鉄親子」
こん平の弟子の二つ目。浜松出身のせいもあり、中日ドラゴンズの熱狂的なファンなんだそうです。
マクラはけっこうおもしろかったのですが、本題の噺の方は何か有名なゲームがベースになっているらしく、元ネタのゲームを全く知らない私には面白さがまるでわからないお話し。
 
04月24日(火)

4月大歌舞伎「法界坊」@平成中村座(2012年4月22日)

今月の東京の歌舞伎は、若手による「仮名手本忠臣蔵」の通し上演が行われている新橋演舞場を別にすれば、国立劇場とこの平成中村座がともに悪役が主人公、大変珍しいことになりました。
「法界坊」は舞台が浅草、先代勘三郎が得意にしていた狂言でもあり、第一回の平成中村座で取り上げられた、まさに平成中村座を代表する看板ともいえる芝居。

しかし、芝居を観終わってからの私の率直な感想を言わせてもらえば、これはちょっとやり過ぎ、なんぼなんでもオチャラケがいささか過ぎていると思いました。観客サービスに徹したと言えば聞こえはいいのですが、ここまでやるとお客にこびているという感じ。歌舞伎ブログに多い女性ブロガーのみなさんはこぞって絶賛されているようですから、串田和美の演出は狙い通りの大成功と言えるのかもしれませんが・・
もともと喜劇色の強い作品とはいえ、ここまでやるのなら「喜劇版・法界坊」とはっきり銘打った方がよかったかもわかりません。

そうはいっても出演者陣の熱演には私も率直に拍手を送ります。やり過ぎの典型と言えるシーンは、扇雀演じる道具屋の永楽屋娘お組に片岡亀蔵の演じる永楽屋番頭の正八が強引に迫る場面ですが、亀蔵のアクロバットな演技は見ていて気持ちが悪くなるほどの怪演。言ってることが矛盾するようですが、通常の歌舞伎では絶対に見ることのできないほどの道化役に徹した亀蔵のプロ根性は絶賛に値すると思いました。

今回の平成中村座ではすっかり第一の売り物となった、背景の壁が外されると実際の隅田川の向こうに東京スカイツリーが出現。この日の大喜利の舞踊の場面では、壁が外れると隅田川の堤防にファンの皆さんの姿が数十人。勘三郎丈はこの人たちにもきちんとお辞儀。

褒めているのか、けなしているのか、我ながらはっきりしないブログになってしまい、大変失礼しました。

 
04月24日(火)

よってたかって春らくご ’12 21世紀スペシャル寄席ONEDAY・夜の部@よみうりホール(2012年4月21日)

昼の部の終了後、銀座一丁目のわしたショップ(沖縄県のアンテナショップ)で沖縄民謡のCDを探したり、2時間ばかり銀座周辺を時間つぶしにうろうろしてから、よみうりホールにリターン。満席だった昼の部よりは若干空席がめだちます。

◇開口一番=林家扇「金明竹」
木久扇のお弟子さんの女性噺家。前座4年目だそうですが、彼女によればもう今年の二つ目昇進者は出ないことが決まっているんだそうです。昇進は来年以降にお預けが確実なことに、何やら不満そうな口ぶりでした。たしかに語り口は前座卒業のレベルに思えましたが、そんな愚痴を落語会の開口一番の高座でこぼすようでは、この先がちょっと、と言うか、かなり心配。

◇春風亭百栄「桃太郎DV」
今日は辛口のブログになってしまいそうですが、率直に言って私にはこの人の落語は苦手です。どんな落語にせよ、聞き手を楽しませなければならない点は落語に必須の条件だと思いますが、私にはこの人の落語にはたいてい何か後味の悪さが残ります。スラプスティック・ホラーがお好きな人向けかも。

◇柳亭市馬「花見の仇討」
マクラでこの日は珍しく詩吟を披露。木遣りや相撲甚句はおなじみですが、市馬師匠の詩吟を聞くのは初めてかも。他の会への出演があったのか、市馬師匠の出番が百栄と白鳥の間に挟まれるとはちょっと不思議な香盤ですが、あくまでオーソドックスな「花見の仇討」にはみんなほっとしたかも。

<仲入り>

◇三遊亭白鳥「初めてのフライト」
JALの経営破たんや安売りの航空会社、民主党政権の迷走ぶりや原発事故の話しなどが出てくるので、まったくの新作のネタおろしかと思いきや、もう数年前から高座にかけている作品だそうです。この間、白鳥の高座にはけっこう接してきたつもりですが、この作品ほど時事ネタ要素の強い白鳥作品はほかに聞いた記憶がありません。
子供の時から先生の言うことを聞かない悪がきだった「小沢一郎君」の小学校時代の恩師の女教師が、一郎君を矯正させようと、安売り航空会社のアテンダントとして沖縄行の飛行機に乗り込んでいるというような設定。
飛行機に穴が開いてダッチロールする飛行に合わせて、会場の観客も右へ左へロールする「観客参加型」の落語。小沢の沖縄滞在が吉か凶かと聞かれて、「凶に決まっている。沖縄にキチはもういらない」と、サゲまで社会批評に徹していました。

◇三遊亭白酒「幾世餅」
白鳥の新作が大うけの後、いかにもやりにくいという話しをマクラにふっていましたが、本題の方は快調そのもの。どんな高座でもいかんなく実力を発揮できる安定感はいよいよ本物だと思わせます。数日前に聞いたばかりのさん喬師匠の「幾世餅」とまったく遜色のない出来。